
安心のヒューマン
私たちには、人間特有の尊大さがあって、ときどき、それに鉄槌を下されることがあるのだと思わざるを得ないような、今回の出来事であった。
インフルエンザを甘くみていないか。
特養に入所しているKさんは、軽い咳と悪寒がするので寮母に訴えるが相手にされない。
それでもつらさが増すばかりなので家族に電話をするが、あいにく今夜は行けないという。
その夜はなんとかがまんして過ごしたが症状はますますひどくなった。
翌朝になって高熱に驚いた周囲がようやく外部の医師(特養には医師が常駐していない)に連絡するが不在であった。
結巨同挫弊急車を呼んで病院へ入院することになったが、2日後に死亡した。
死因はインフルエンザから併発した肺炎であった。
2000年1月20日の夜のことである。
千葉県内の特別養護老人ホーム「A荘」に入所していたK三郎さん(80歳)は、この日の夕食のときに、なんとなく調子がよくなくて食欲もなく、いつもは大体全部食べる夕食を半分以上残した。
特にこれといった身体の異常はないが、ちょっと咳が出るのと、なんとなく寒気というほどでもないが、少し寒い。
Kさんは「とにかく調子がよくない」と思って「看護婦さん」(ただし白衣は着ているが夜勤のヘルパーで、看護婦ではない)と、ヘルパーに事情を訴えた。
しかし、そのヘルパーは「忙しいから手短かにいって下さい」と、話をちょっと聞いただけで「寒いのなら寝てなさい」と取り付く島もない。
Kさんは不承部屋に帰って、ベッドにもぐり込んだ。
Kさんは2人部屋にいたが、この日、相棒のSさん(78歳)は、夕食後、談話室でテレビを見ていて、部屋にはいなかった。
Kさんがベッドに入ったのは午後7時半ごろだった。
Kさんは、それから少しウトウトしたが、1時間ちょっとぐらいして、何か胸を押さえつけられているような夢を見て眼が覚めた。
すると、からだに震えがきていて、ガちょっとした悪寒から始まってタガタと寒気がする。
それに全身がだるい。
いわゆる全身倦怠感である。
Kさんはもう一度、白衣のヘルパーに訴えようと思ったが、もともと、あまり感じがよくないうえ、先刻、剣もホロロに「寝てなさい」といわれたのを思い出して、訴えるのはやめにした。
しかし、ガタガタと震えがきて寒い。
Kさんは、震えのなかで、これは異常だと思い、何とか自宅に連絡しようと思った。
あいにく同室のSさんはいない。
やむなくKさんは起き上がり、十円玉を3枚ガウンのポケットに入れて、一歩一歩踏みしめるような感じで玄関脇の赤電話のところまでやっとの思いで歩いて行った。
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